ワクワクが止まらないまちづくりへ~秋田市~ 第3回「人口減対策」

秋田市を拠点に市民協働のまちづくり活動に取り組む秋田県議会議員の武内伸文と、穂積志秋田市長が初めて対談、オンライン動画を公開しました。
本稿は、対談の内容の一部を読みやすく加筆・修正したものです。

対談動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=Z4PyRzOMKsk

武内伸文(たけうちのぶふみ)
https://takeuchi-nobu.com/
1972年、秋田市生まれ。秋田高校、青山学院大学法学部卒。外資系経営コンサルティング会社勤務、英国留学、秋田市議会議員などを経て、秋田県議会議員1期目。2005年に帰郷以来、市民協働で社会起業に取り組む。
秋田市長 穂積志(ほづみもとむ)
https://www.hodumi-m.com/
1957年、秋田市生まれ。秋田南高校、成蹊大学法学部卒。秋田市議会議員、秋田県議会議員を経て、2009年から4期、秋田市長を務める。市内を襲った豪雨災害で陣頭指揮を取り、モデルケースとして全国の自治体から注目を集める。
武内 3回目は「人口減対策」についてです。少子高齢化、人口減少が進んでいる秋田県では、これから移住を受け入れるための対策が重要になってくると思います。そこでは、まちの魅力や住み良さなどが大切になります。秋田市は、出版社発表の「住みたい田舎暮らしベストランキング」で3年ほどランキング上位に入っていますね。

穂積 そうですね、秋田市は文化的な香りもありますし、過ごしやすい。治安も良く、子どもの教育も行き届いています。若い皆さんにとって、魅力あるまちづくりができていると評価をいただいていることをうれしく思っています。

武内 若者のみならず、大企業の担当者などが赴任して来ると、秋田市に数年滞在後、市内に家を買って終(つい)の棲家とする人もいらっしゃるようですよ。私も秋田を離れていた期間がありますが、ひいき目を抜きにしても素晴らしい街だと思っています。外の視点から秋田市を評価されていることを、もっと市内外に知らしめられるよう広げていきたいですね。

穂積 人口減少のうち自然減については、なかなか歯止めがかからないところはあります。一方で、社会増なら図ることができるのではないかと移住・定住のための政策に力を入れてきました。昨年は、約400人の皆さんが秋田市に移住し、この5年で1000人ほどになります。移住の促進には働く場のあることが大切ですが、コロナを経験して、大都市にある本社に出勤しなくとも地方でテレワークでできる仕事があることも分かってきました。働き方も変わってきたことにも視点を当てながら、移住・定住政策に力を入れていきたいですね。

武内 秋田市の魅力を外の皆さんに伝えることは非常に難しいですが、まずは一度、秋田に来ていただけるよう工夫することも必要です。例えば、自動車教習所の合宿免許取得が、秋田で行われることは少ないようですので呼びかけられないかなど。

穂積 ほかにも切り口はいっぱいありそうです。これまでも秋田市では、子育てや移住・定住に力いれてきましたが、これからは子どもの数を増やすことにもっと力を入れたいと考えています。若い世代は、一般に所得も低く、一方で物価は上がっています。学校給食を無償化し、所得制限を撤廃して保育園の無料化していくことや、医療については、18歳までの医療費を無料にできないのかどうか…。また、若い皆さんが安心して出会い、結婚して、子どもを授かり、将来や子育てに心配のない制度を確立していくことで、自然増を図りたく考えています。

武内 まちづくりの議論は、人口の社会増・自然増にも関わるかと思いますので、少しトピックを変えて、土崎エリアについて話をうかがいたいと思います。私は、港が街にあることは非常に貴重だと思っています。人が出会う場としてロマンチックですし、市民の憩いの場にもなります。土崎の港は、もっと魅力を引き出せないかと思っています。

穂積 そうですね、私もクルーズ船上から眺めてみたのですが、寄港したクルーズ船の乗客を迎え入れる港として、最初に目に入る街並みは殺風景ですね。クルーズ船は、昨年は26回、今年は34回、4月の30日間だけで15回も入港します。土崎エリア、秋田市を回遊して、買い物や食事を楽しんでいただける仕組みを作っていきたいです。

武内 港に関する秋田県の長期構想があります。港の一部を埋め立てたり、道路を付け替えたりすることで、一体的な空間を造る計画です。駐車場などにするのではなく、市民や観光客の皆さんが憩える場にしたいですね。

穂積 埋め込むことで、クルーズ船が同時に2隻入港できるようになるそうです。入港するクルーズ船が増えることも想定されます。土崎エリア、秋田市内で回遊して楽しんでもらえるような仕掛けが必要になってきますね。

武内 他県の港には、世界的なカフェ・チェーンが出店して、世界一美しいカフェと称される店舗を営業しています。秋田港もそのように民間に活用されるといいですね。

穂積 秋田市内では宿泊できるホテルが足りないところ、ホテルの出店などを検討する民間事業者もあるようです。ただのビジネスホテルだけではなく、コンベンションなど集える施設であったり、廃線になった線路を活用したり、臨海貨物のレールを外したら、ヨーロッパにあるような回遊する仕組みを導入するなど、さまざまなことを考えている皆さんがいます。

武内 出来上がった空間をどのように改良していくか、皆さんと話し合っていきたいですね。

穂積 土崎エリアでは、残念ながら統廃合される小学校があります。その後、廃校舎をどのように利用するのかを検討しています。市街化区域にありますので宿泊施設として、また、企業のオフィスとして、体育館もあるのでアスレチック施設として汗を流すことができます。レストランとして食事を提供することもできそうです。私は、これらについて検討するためのワークショップを作ることを約束していますので、皆さんからいろいろな意見を出してもらい一緒にまちを作っていく希望やワクワク感があります。

武内 まちを回遊する循環バスなども必要になってくるかと思います。そこでは、JR土崎駅から港までを結ぶことで市民の利便を上げることもできます。また、洋上風力が増えてくると、教育視察や企業視察、観光など人が集まることも予想されています。

穂積 大勢の皆さんが視察に来てくれています。秋田は洋上風力のトップランナーですからね。

武内 最後に、外旭川エリアについて。私は、コンパクトシティを徹底すべきことを訴えて続けています。外旭川エリアについては、人が集うエリアというよりは、工場や農場などに活かしていくイメージを持っていますので、市長とは考えの方向が異なる部分ではあります。ただ、AIやICTの実証実験を行うための実験都市を作りたいとの市長の考え方は素晴らしいと思っています。

穂積 市民の皆さんに分かりやすく伝えられなかったことを反省しつつですが、私の持つ外旭川エリアのイメージは、御所野にあるような大型商業施設をもう一つ作ろうということではないんです。近未来的なAIやICTを使う、時代が要求するモデル地区、あるいは、実証実験ができる地区にしていきたいとのイメージです。そこには、秋田大学医学部や秋田県立大学などの高等教育機関が関わります。民間企業は、大企業から地元企業まで40社ほど。医学部はソフトバンクと連携して、オンライン診療ができて、薬を自宅に届けるなどの実験を行う。これを秋田市全体に配して確立していきます。これらのデータは、病状に合わせた情報として、日本中、世界中で活用できるようになっていきます。県立大学では、水温や室温、肥料の管理などをスマホで行い、花卉(かき)栽培や園芸栽培など農業に活用できるよう農家の皆さんに受け渡していきたいです。また、泉外旭川駅からEVの自動運転の運行など、さまざまな思いを込めています。こうして交流人口を増やせるようなエリアにしたいんです。基本計画を見直しつつ、示していければと思います。

武内 ICTやAI分野に関連した新学部が、4月、秋田大学に開設されます。卒業生はそこで働くこともできるようになりますし、さまざまな循環ができそうです。また、同事業に携わる企業により、賃金も上がっていく効果も見込めるかもしれませんね。

穂積 下新城エリアにある県立大学敷地を造成し、AIや ICT関連企業や工場、データセンターなどへの活用することも検討されています。データセンターは大変な電気量を使いますが、県内4地区で洋上風力を事業化する中、豊富な自然エネルギーで賄うことができます。世界中から注目されていることです。このように、外旭川も含めて、まちの連携を深めることで、より近代的、魅力的、もっと活力を生み出せる可能性があること知ってもらいたいですね。

武内 下新城には秋田県の再エネ工業団地もできます。国も脱炭素電源のある地域の企業誘致は、しっかり支えてくれます。外旭川の議論にもつながりますので、これらを含めても考えてもいいのではと思います。

穂積 「GX2040ビジョン」(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略)ですね。データセンターは、大量の熱を発しますが、冷ますための雪が秋田にはあります。逆に、熱を使う園芸作物に活かすこともできます。こうして、さらに大きなワクワクするまちができそうです。

武内 単なる観光農園ではなく、どんどん農業を広げ、生産物を卸売市場に流していければいいですね。外旭川にはいろんなアイデアの可能性がありそうです。

武内 3回にわたり、とても有意義な話をうかがうことができました。ありがとうございました。今後とも、しっかりした秋田市のワクワクするまちづくりへ向けてお願いします。

穂積 楽しかったです。夢を語ることができました。ありがとうございました。

第一回 「災害」対策について
第二回 「まちづくり」について
第三回 「人口減対策」について

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